七 -ななー

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一緒に昼食を取ってから、彼が外側から鍵をかけて出て行ったのを見送り、食べたものを片付け終わると、外には曇り空が広がってきている。 「テレビは何やってるかなー……」 この家ではNHKは映さない。正確に言えば受信料を払っていないから見る権利がないのは当然だけど、中には未払いでも堂々と大河ドラマを見ているところだってあるし、見た・見ていないがあちら側に正確にわかる訳でもない。 それでも彼は「興味ないし、見ないから払いませんって言っちゃったし、だったら徹底的に見ないようにしてやろうかなと思って」なんて少し子供じみた正義感を振りかざし、そのチャンネルだけはリモコンが潰れていて映らない。 私もそこまで徹底している彼を少し面白いとは思っても、怒る事もなければ、逆に意地になってテレビの本体をいじってまで見ようなんて思っていないし、大河ドラマも朝ドラもはじめを見なければ、すごく見たいと思うようなものでもない。 カチカチとチャンネルを回しても、この時間はドラマの再放送位しかやっていないし、やっている昼のニュースは、彼が「このキャスターは嫌いなんだよ」と、嫌いになった理由を教えてもらっている内に私も毛嫌いしてしまい、何となくドラマを眺める事がいつものパターンになりつつある。 外はどんどん雲行きが怪しくなり、雨が降って来るまでに帰ってくればいいけど。と思いながら、彼は持っていても私は携帯電話を持っていないから居場所は確かめようがないしなと、外の雲を少し恨めし気に睨みつつ、乾燥が終わったものを取り込んで畳んでいく。
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