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畳むと言えば、彼の部屋にある新聞はきれいに畳まれていて、それこそ私が触ったらすぐにばれそうな位ぴっちりと新聞入れに入っている。
時折何かをスクラップしているのか、本棚にスクラップブックがあるようだが、これも新聞の一部にカウントされているようで、前に掃除しようと触れたらものすごく怒られてしまった。
(あれ……)
その中に何か文字が書かれていたような気がしたが、どうにも思い出せない。
首をひねりながら考えていると、大して内容が頭に入ってこないドラマの主人公らしき男性が、娘らしき女優に泣きながら叫ぶシーンに変わっている。
『ケイコ!!』
「っ!?」
体がびくりと震えたが、自分でも何に反応したのかわからない。
けれども体は一度震え始めると止まる事を知らず、終いにはガタガタと体全体が震えだす。
ぎゅっと体を抱きしめるようにして1人用のソファーに縮こまっていると、外から音がして程なく、彼が両手いっぱいに荷物を持ってリビングに入って来る。
「なな?どうした!?」
「わ、わからない……」
わからない、本当にわからない。まるで自分が何者なのかもよくわからなくなってしまったようだ。
ドラマはそうしている間にもどんどん進み、先程の男性が女性に向かって大きく手を伸ばしている。
『ケイコ!よかった、無事……』
全部の台詞を言い終わるよりも前に彼がリモコンを消すと、震えている私の体を包み込むようにして抱きしめると、優しい口調で「大丈夫だよ」と言ってくれる。
「寝たら明日には怖い事も忘れているから、ゆっくりお休み」
「……うん……」
言われたが最後、体はそれ以上の何かを感じ、意識がゆっくりと遠のいていった。
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