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外は雷鳴が轟くも、室内は外の光に頼るかのように暗闇が広がり、部屋の中央だけが雷よりも人工的な光でぼんやりと光る。
― 凶悪事件SPもこれで7回目となりました。最後に被害者の情報をおさらいします。
1人目は・・・ ―
スーツ姿のキャスターと、女性アナウンサーの後ろでは、大量の電話が置かれた後ろにオペレーターらしき女性がずらりと並び、番組中も第三者から寄せられる情報を受け取るべく、せわしなく電話対応に追われていた。
― 7人目、最後の被害者は ハセガワ ケイコさん、失踪は約7年前。失踪場所は〇〇県〇〇市七門町の付近。7月の試験に出席した後行方がわからなくなっており、現在生きていたとすれば年齢は27歳。身長は157cm、特徴は右目と口元にあるほくろです ―
ぱっと瞬間的に映った当時の女性の写真を見ると、男は口元を緩めながら、傍らに眠る女性の足を軽く撫でる。
撫でられた右足には痛々しいうっ血と赤黒い痣が残っており、無機質な足枷が部屋の中央にある太い柱まで鎖でつながれていたが、男はそれすらも愛おしいと言わんばかりに、擦れた傷を撫で続けた。
「娘は死んでない!!必ず生きている!オレ達は絶対あきらめない!!」
「ハセガワさん、落ち着いてください」
「いいか!犯人を見つけたらオレが殺してやる!!」
突如画面の端から現れた男は、周りの制止を振り切り、画面越しに強い力で睨みつける。
ざわつく周りが慌てて抑えて袖に消えていくのが映し出されると、男は誰に聞こえる訳でもなく、長い年月をかけて女性から奪い、女性自身がなくしてしまった名前ではない名前を呼び、薄く笑いながら今度は自身の指を見つめる。
足枷を小さくしたような左薬指に嵌めたデザインの指輪を撫でると、女性を持ち上げて寝室へ足を進めた。
「見ていたら殺してたよ。よかったね、親子共々助かってさ」
「さすがに『はち』って付けるのは犬丸出しっぽいし、ダサいよなぁ。………なぁ、7(なな)?」
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