同居人との出会い

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同居人との出会い

本日は公休日。とはいえ、保育士は信用度が何より大事なので、休日の過ごし方も気を付けなければいけない。 「“青葉、主演・福士蒼汰”……マジか」 が、自身をモデルにした小説が実写化されるとなると話は別だ。言葉遣いもくだけてしまう。 そんな十後光(とおご ひかる)は帯で目立つ文庫本を陳列棚に戻し、書店を出た。その時いつも思う--視界に入る青空は確信をついた問いを投げてくる、宇宙よりも遥か上から見据える神のように。 普段なら応じないが、この時は視線を合わせ、一音一音はっきりと声に出してやる。 その展開へとなった発端は就職活動である。とある事情で数年間海外で暮らしていた彼の最終学歴は短大で、企業の正社員を目指すなら中途採用やアルバイトからの登用しか道はなく、本人もそれを承知で挑んでいるものの。 「資格は保育士だけか……何故、数年海外に?」 「それは……」 面接官にとって留学についての質問だろうが光にとってそう簡単に説明できるものではなく、適当な思い出で済ませようとしても詰まってしまうのでいつもお祈りメール。何十通も受け取った彼は切り札として、叔父の陽一郎に連絡を取った。 建築士の陽一郎は多方面での広い人脈を持ち、甥の光を可愛がっている。だから、滅多にない頼みに快く応じてくれたのだ。 光の自宅から自転車で十分以内の保育園は夫婦で営み、園児数は四十人ほど。担当クラスの保育士は真面目を具現化したような三村美和子に、素朴な優しさが滲み出ている六道さゆり。 「二歳児はご存じの通りイヤイヤ期とも言われ接し方に苦労しますが、やりがいは充分です。手のかかる子もいますが、笑顔を見た時の広がっていく幸せをあなたにも是非感じてほしい」 「三村先生の言う通り。最初は思う通りにいかないけど慣れてくれば接し方も判ってくるし、男の子はやっぱり男の先生のほうがいいもの。あなたなら大丈夫」 「はぁ……」 「それと、クラスに入る前に一つだけ注意しておきます。最近は男性保育士に対して厳しいので、預け入れやお迎えの時に良い反応をされないこともある……そうなっても不満だと態度に表さないこと」 「はい」 「いつの時代も親は厳しいってこと。大丈夫、ちゃんとしてれば何も言ってこないわ。さぁ、そろそろお昼寝から起きる頃よ」 初顔会わせの結果、二週間経った頃には自宅アパートの玄関で眠る日々を送るほど気に入られた模様。
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