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当日。
叔父宅でのホームパーティの参加者をみて光は驚いた。テレビでよくみる女優や俳優、人気歌手が大半だったからだ。
改めて叔父・陽一郎の人脈に驚きつつ近くにあるウェルカムドリンクを手に取り、人見知りパワーで包まれた体を壁にくっつける。オーラというものが無いせいか誰も光に声をかけてこず、光もウェルカムドリンクの次に軽食を頂いてから陽一郎が声をかけるまでずっと壁と友達だった。
「よっ! 楽しんでるか?」
「……この顔が楽しんでるように見える……?」
所詮一般人だから眼中にないんだよ、と無意識に不満を漏らせば、その台詞を待っていたかのように陽一郎はにやりと口角を上げ。
「こっちに来いよ」
同じく一階の応接室にいたのは、ふんわりと髪が巻かれた一人の女性。目は大きいがつり目で、早い話が猫のような顔。光より年上のようで落ち着いている。
向こうは陽一郎の後に現れた光を何の感情も持たずに凝視し、依頼先の方へ視線を移す。
「こいつが例の保育士! 金欠みたいでさ、土日しか入れねぇけど、共働きの両親のせいで家事全般できるから雇って損はナイ!」
「え? 雇う?」
「しかもキレー好きだから掃除は完璧だし、保育士の仕事って家でも何か制作しないといけねぇらしいから執筆中に邪魔されることもナシ!」
「ちょっと叔父さん、雇うって何? 何の話っ?」
光は忘れていた。叔父の口角を上げた表情から出る話で良い思いをした事がなかったということを……。
「こちら二宮明莉さん。小説家。家事全般やってくれる人募集中。それに見事当選したのが光。おめでとう、美人との同居生活の始まりだ」
そしてこれも当然良い結末を迎えないに決まっている、と今になって酔いが回ってきた。
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