四月一日 月曜日

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 島は、三人×三人の六人がけ長デスクで構成されている。長デスクには中央に一本、パソコンのコード類を飲み込む隙間が空いているが、隣の席との間は区切られていない。  山保は理央を、島の一番前、二番目の島に近い側に座る人物のもとへ連れていく。 「こちらが係長の仙太(せんだ)さん。うちのチームのボス」  デスクの上には、書類のぎっしり詰まった緑色のファイルボックスが並んでいる。そこから取り出した文書を開き、各項目にものすごい速さでチェックを入れていた仙太係長は、名前が挙がったことで動きを止め、山保の方へ椅子ごとくるりと身体を向けた。そうしてすぐに隣の理央に気づき、顔を上げて見つめてくる。  ぴりりとした緊張が、理央の身体を駆け抜けた。全国規模で展開する大手〝笑顔生命〟で、係長という肩書きにしては若手の方だと思う。しかしながら彼を包む空気は確かに役職者のそれである。さらに、一瞬怯んでしまうような強面が、彼の威厳に拍車を掛ける。その自覚があるのか、仕事モードの据わった目を不器用な様子で和らげて、仙太係長は立ち上がる。立ち上がったことで今度は理央を見下ろすかたちになる。 「よろしく」  真面目な人間だ。髪は短く整えられ、ワイシャツの襟はパリッと立ち、ネクタイはきちんと首元で締められている。頑張ってつくってくれたような下手な笑みにはむしろ、好感を抱ける。
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