四月一日 月曜日

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「七海の席は、神月さんの前な」  スタスタとデスクを回っていく山保に、理央は小走りで従う。山保は閉じたノートパソコン以外何も無い席の椅子を引くと理央に勧め、自分は左隣の席に慣れた様子で腰掛けた。デスクの右下には、三段のデスクワゴンがついている。 「この四人が〝チームA〟ね。仙太さん、神月さん、七海、俺」 「はい」  自分以外の三人を回し見る。三人ともノートパソコンを開いており、それがなんとなく仕切りのようになっている。四人の席の中央には電話が一台ある。 「チームAの島はここと、後ろの――」山保は椅子を回して振り返る。「――そこ」  背後の島にはプリンターが二台と、デスクトップパソコンが二台。一時的な物置き場としても使われているようで、『山保 処理途中』『仙太 決裁未済』などと名札のついたファイルボックスが点在している。 「そんで、出入り口の方のふた島は、〝チームゴー〟の島」 「〝ゴー〟?」 「あー、えっと、レッツゴーとかのゴー。GとOの」 「……GとO。チームAと、GO……AとBじゃないんですね?」 「わかる! それ、思うよな。俺も配属時に思ったよ。これさ、営業監査室の〝営業〟をもじってんの。エイとゴウ、エーとゴーってね。まあ、正式なチーム名じゃないから適当なんだろ。身内にだけわかればいいっていう」 「なるほど……」  正面を向くと、神月越しにチームGOの二つの島が見える。こちらのチームと同じく、四人しかいない。 「そこの通路」  びくり、と肩を縮めて横を見る。山保の顔がすぐそこにあった。椅子を寄せ、身体を屈めて、理央と同じ目の高さで前方を見つめている。声を落として山保は呟くように言った。「二つ目の島と三つ目の島の間、ちょっと、広く取り過ぎだと思わない?」
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