四月一日 月曜日

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 ちょいちょいと手招きをし、山保は壁際にずらりと並ぶキャビネットに歩いていく。キャビネットはどれも白一色の観音開きで、常に扉が閉まっているので中に何があるか、理央には見当もつかない。だが山保は一発で目当ての扉を開いてしまう。 「ファイルはここね。一番下の段。何色がいい?」 「えっと、じゃあ……水色で」  それ以外にはピンクと黄色しか無い。 「必要になったら勝手に持っていっていいから。ファイルだけじゃなくて蛍光ペンのカートリッジとかボールペンの替え芯とかも……っつーか、アレだな。替え芯どころか本体が無い。うん。新入社員って手ぶらで配属だっけ? 俺のときは人事がいろいろ持たせてくれたけど」 「あっ、あります、研修室に。蛍光ペンもボールペンも。備品はぜんぶ明日の朝、配属課に出勤する前に研修室に寄って持っていくようにって言われてます。はさみとか、ホッチキスとか」 「そうなんだ? ちなみに審査印は?」 「しんさいん……?」 「印鑑だよ。丸い、ちょっと大きめで、日づけと個人の苗字が入った」 「……いえ、配られたのは普通の文房具だけで」 「おっけ、申請しとく。金曜までに来るかはわからないけど」  キャビネットを閉め、もとのデスクに戻る。
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