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八時半になり、学校と同じチャイムが鳴りだすと、社員たちは一斉に立ち上がり、部屋の中央――二つ目の島と三つ目の島の間に円になって集まった。総勢十名。本当に小さな部署だ。
朝礼当番の社員が司会をし、「おはようございます」のあいさつから始まる。まずは『適正募集宣言』の唱和と、コンプライアンス・マニュアルの読み合わせ。続いて、音無代理による本日の予定の周知、三輪室長のお話。最後に経営理念の唱和。
全項目を十分程度で終えて、ついに理央のターンがやってくる。三輪室長はちらっと理央の様子を窺ったあと、大丈夫そうだと思ったのか「ハイッ」と手を叩き、嬉々として言った。
「皆さんすでにご存じのとおり、この営監に昨日から、新しい仲間が増えました。新入社員の七海理央くんでぇす! パチパチパチパチ。さあさあ一言、言っちゃってェ? 理央ちゃんのォー、ちょっとイイトコ見てみたい、ハイッ、パーリラッ、パリラ」
なんて振りだ……!
「凛子さんやめて。廊下に聞こえる」と、すぐに音無代理が冷静に止めた。他の皆は慣れているのか、動じた様子も無い。理央は大学時代のサークルの飲み会でよく聞いたイッキコールを思い出した。
気を取り直し、深呼吸をして腹に力を込める。
「昨日からこちらに配属になりました、七海理央と申します。先輩方の仕事ぶりに早く近づけるよう、これから頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」
拍手と、チームGOの方から場違いな指笛が鳴った。誰がやったのか理央には見えていなかったが、音無代理が小声で「小田村(おだむら)さん」と注意するのが聞こえた。
その後、「今日も一日よろしくお願いします」と朝礼当番が締めて、朝礼は解散となる。
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