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席に戻った理央はさっそく何をしていいかわからず、とりあえず新品のリングノートとボールペンを机上に出して周りを見回した。山保は自分のノートパソコンを起こして電源ボタンを押したあと、隣の島のデスクトップやプリンター、部屋の角のコピー機を次々に起動して回っている。仙太係長はキャビネットから緑のファイルボックスを取り出して自分のデスクに運んでいる。神月はずらりと並んだキャビネットの中身を端からひとつひとつ確認している。
「自分のパソコン、電源入れちゃっていいよ」
キャビネットに寄って『山保 処理途中』のファイルボックスを手に戻ってきた山保は、理央の後ろを通過しながら言った。「まぁ今日はほとんど使わないけど」椅子に座り、クリアファイルから厚さ1センチほどの分厚い紙束を出す。
「これ、昨日の帰りに刷ったんだ、業務マニュアル」
「ありがとうございます」
「まだ読んでもさっぱりだろうけど、暇ができたらなんとなく見といて。綴じるファイルは昨日教えたところから勝手に持ってきていいから。うん、そこ。そこの一番下の段ね。穴あけパンチは真ん中の段」
理央は黄色のファイルに紙束を綴じ、表紙を開いた。1ページ目には『営業監査室業務運行マニュアル』と題され、2ページ目からは長い目次が続いている。
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