四月一日 月曜日

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   やがてひとつの焦げ茶色の扉に辿り着く。扉には細長い小窓がついているが、擦りガラスになっているため内部は見えない。 「緊張してる?」 「はい、まあ、とても」 「そりゃそうか、ハハ。新入社員、初お目見え。緊張しないわけないか。あ、社員証、ここにタッチで」  言いながら男は、扉の横の、白い四角いICカードリーダーに、首から下げた社員証をかざす。ピーピッと音が鳴り、〝解錠〟と書かれた下の、小さなランプがグリーンに点灯する。  ガチャリ、と鍵が外れる。 「〝共連れ〟注意ね」 「はい」  答えて、自分も社員証をかざす。こうして個人の入室記録を残しておかないと、あとで退室するときにエラーが出てしまうらしい。午前中の新入社員オリエンテーションで説明を受けた。 「さあ、行こう」  男はにこりと笑い、扉を開けて入っていく。理央は汗ばむ手のひらをぎゅっと握ってあとに続く。
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