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理央はまばたきもせず上司とチューターを見つめて固まっていた。眉根が僅かに寄っている自覚があった。
「ごめんね、初日から。まあ……三輪凛太さんはこういう人だから」
「いえ僕、あっ、私は……別に」
「〝僕〟でいいよ、身内には。室長代理の音無(おとなし)です。歓迎するよ、七海くん」
薄く微笑んだ表情はまるで病人のようだった。だが、とりわけ頬がこけているわけでもなく、差し出された手を握ると、しっかりした男のそれだった。
「あー、代理だけずるいィー。アタシも理央ちゃんと握手……」
「はいはい駄目駄目。山保くん、時間も無いから早く七海くんをデスクに連れてって」
山保にトントンと軽く肩を叩かれ、理央は正気に戻ったようにハッとして振り向く。案内されたのは、山保が初めに座っていた島だ。出入り口の扉の方から数えて三番目に当たる島である。
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