第1章

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しばらく歩くと、誠は何故かいつも虫取りをする山を素通りして別の方向へと歩き始めました。 「誠兄ちゃん?虫取りするんじゃないの?」 「虫取りはこの後だ!健一、川に行くぞ!」 「えぇ!?だって、じーちゃんにダメだって………」 「そんなの大人の都合ってやつだよ、ほら行くぞ!」 そう言って進んでいく誠に、健一は怖い顔をした祖父を思い出しましたが、そこは子供………ましてや大好きな誠の言葉もあってか、健一は誠の後を追いかけたのでした。 川へ行くと、普段は水遊びをしている子供達や魚釣りをしている大人などがいるのですが、今日は誰もいなく川は気味が悪いくらい静まり返っていました。 「ね、ねえ………やめておこうよ?」 静かな川と祖父の言葉を思い出した健一が思わず気弱な声を出すと、誠はわざとらしいため息を吐いて健一のほうを向きました。 「健一、お前も男なら弱気にならないで勇気を出せよ」 「だって………」 「分かった分かった、んじゃ俺先に覗いてくるからそしたら何か教えてやるよ」 そう言って誠は1人川に近づくと水面を覗きこみました。 1分、2分………それから5分、10分と経過していきましたが、何故か誠は顔をあげずに水面を覗きこんだままでした。 「誠兄ちゃん………?」 呼びかけても返事をしない誠。 そんなに面白いものが見えているのかと、健一は恐る恐る誠の後ろに近づいて、そっと水面を覗いた瞬間……… すぐに、その場から走って逃げました。 水中に映る誠の顔。 しかし、その顔は必死の形相でもがいており、そしてそんなもがく誠を無数の真っ黒なヒトガタが引きずり込もうとしていたのです。 そして、水面を見ていた誠の顔は………空洞のようにポッカリと穴が空いていたのでした………。
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