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あの時、春都は──
「このまま帰れると思うなよガキが!」
すれ違い様にガンをつけられた──相手の男達は、そうテツにいきり立っている。
しかしテツにしてみれば、たかが相手の男と目が合っただけのこと。
恋敵とも言える春都と、想い人である雅のデートに心ならずも付き合わされている身の上で、いつになく不機嫌な表情をあらわに歩いていただけだった。
「中坊だと思って俺達を舐めてんだろ……」
言い掛かりも甚だしいと思いつつ、だが、鬱屈とした心を少しでも晴らせるのなら、目の前で喚くだけの男をテツは手頃な相手だと睨みつけた。
「その目つきが生意気だって言ってんだよ!」
「これは生まれつきだ……お前らの目つきもどうかと思うぜ……」
「口の聞き方も知らねぇ中坊が調子にのってんじゃ──ツ!」
売られたのは喧嘩だ。お喋りの相手をするつもりは毛頭ない。
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