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「どう?自信は」
宗太郎の質問に、また不思議に思いながらも答える茉莉花。
「記録会とは言え、大会への出場権が目的だから。順位重視ね」
「茉莉花だったら問題ないか。100も、幅跳びも」
「そっちは?せいぜいどっちかで出場権を取りなさいよ」
「そうだね…… どうなるかな」
と、不敵な笑みを浮かべる宗太郎。
「………」
「ん?どうした?茉莉花」
「ねぇ、ソータ……」
「何?」
「いいえ…… なんでもない」
「じゃ、100に行って来るね」
「ええ。頑張って」
「ゲ…… オマエと同じ組かよ……」
五レーンが用意された特設の100m用の直線。エントリーは三十人のため、計六組によるタイムレースとなる。
予選→決勝のように勝ち進むのではなく、ブッツケ一回ポッキリでの、タイム順のレースとなるのだ。
宗太郎の隣に学年一俊足の持ち主がいたため、大袈裟に嫌がる顔を作る宗太郎。
「ま、せいぜい離されないように、ついて来な」
スターティングブロックをセットしながら、自信満々の俊足君。
それもそのはず。他の生徒とは群を抜いて速く、県大会出場の常連でもあった。
さぁ…… それはどっちかな。宗太郎がまた不敵な笑みを浮かべる。
「位置について──」
スターターの声がかかる。
「用意──」
乾いた雷管の音が青空に響くと、レースを見ている群衆から騒めきが起こる。
スタートダッシュを決めて頭一つリードしたのは、なんと宗太郎なのである。
遅れまいと俊足君も必死に食いつこうとするが……
結局みるみる離され、なんと宗太郎がダントツのトップでレースは終わった。ダントツ?相手は県大会の常連のはずである。そのタイムとは……
走り終えた五人が、自分のタイムを聞くためにゴール地点へと戻って来た。
「幸崎……」
「ふぇーい」
気の抜けるような宗太郎の返事。ストップウォッチを持っている教師の手が震えている。
「11秒8……」
「じゅういちびょう、はちぃ!?」
ここはオールウェザーの立派な競技場ではない。スパイクこそ履いているものの、中学校の普通の校庭である。
こんな条件で12秒を切るとは…… そのタイムを耳にした誰もが驚き、ざわつき始めている。
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