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「砂糖、10杯は入れてるよ……」
「お!」
香に突っ込まれてハッとする宗太郎。
小瓶にほぼ満タンに入っていたグラニュ糖が、半分くらいにまで減ってしまっている。
それが全部、小さなコーヒーカップの中に収まってしまっているのだ……
「ねぇ、私から誘われるのって…… 迷惑?」
香にとっては屈辱であったのだろう。ふくれっ面で宗太郎を睨む。
「いいや…… 全然。むしろありがたいくらい。っつーより、すげー嬉しい。でも……」
「…… でも、何?」
なんて説明をしたらいいのかが、わからない宗太郎。
今、この状況で何を言っても、きっと言い訳にしか受け取ってもらえないんだよな。
「まだ夏休みの予定なんか決めてないから…… ゴメン、少し考えさせて」
言いながらコーヒーをスプーンで混ぜ、口元へと持って行く。その動作に香がハッとする。
「幸崎くん!」
ん?と、言いたげな宗太郎の視線。だが、時すでに遅し── 宗太郎の口の中に非常に甘い液体が広がる。
冷静を装い咳払いをしてカップを置いてから、ソーサーごと向かい側の香のほうへ押しやる。
「…… あげる」
「…… いらない」
*
理系大学の応用生物学科に通う宗太郎。
海洋生物の研究室に所属しており、一年生の時は休暇返上で水槽で飼っている動物たちの世話のために、ほぼ毎日大学を訪れていた。
二年生になり、その役目は後進に譲ったものの。何かと召集される場面は多い。
他の研究室の連中は試験終了、即夏休みとなる中。宗太郎はまだ大学に通い続けている。
とは言え、サークルやら部活動やらで人の出入りは夏休み前とそれほど変わらないが。
翌日に閉館日の水族館へ訪問するため── やることと言えば飼育員の補助…… 館内の掃除が主なのだが。
その事前打ち合わせのためにキャンパスにいる宗太郎。
午前中に打ち合わせは終了し、営業を休止して、ただの休憩所と化している学食で缶ジュースを片手に雑誌を読んでいる。
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