第一章 未来にさよなら

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「おい宗太郎!オマエ、どーゆーつもりだよ」  同じ学科の連中数人が、そんな宗太郎の元へやって来た。 「…… 何が?」  雑誌の世界から引き戻された宗太郎。少し不機嫌になる。 「香ちゃんの誘いを断ったらしいじゃないか」  どこの世界でも、こう言ったタグイの噂は信じられないスピードで伝達されるものだ。  雑誌を閉じ、大袈裟に溜め息を()く。 「断ったんじゃないよ。ちょっと考えさせて、って言っただけ」 「同じコトだろ。オマエはバカか?香ちゃんの誘いだぞ!なんで即答しないんだよ」 「しょうがないじゃない。ゼミやらバイトやらで忙しいし……」  群がって来た連中の態度が、怒りから安堵に変わっていくのが手に取るようにわかる。 「まぁ…… いいや。ライバルがひとり、減ったって考えていいんだな」 「…… 勝手にしろ」  連中が去って行き、宗太郎が再び雑誌の世界に入り込んでいく様を、遠くから見ている人物がいる。  上岡(かみおか)隼人(はやと)である。  隼人は宗太郎の高校時代からの級友であり、この大学でも同じ研究室(ゼミ)に属している。  何か言いたげな含みのある表情で宗太郎に近付いて行く。だが雑誌の世界の中にいる宗太郎は、それに気付いてはいない。 「宗ちゃん、ちょっといいか?」  ビクッと身体を反応させ、声の主を見る宗太郎。 「…… なんだ隼人か。驚かすなよ」  宗太郎の向かい側に座り、テーブルに肘を付けて顔を近付ける隼人。 「どうしちゃったんだよ。最近の宗ちゃんって、まるで高校時代に戻っちゃったようじゃないか。  この大学でまた宗ちゃんと一緒になって、まるで変身したように明るくなってくれて。  心細かった俺は、すげー嬉しかったんだぜ。なぁ、何があったんだよ」  囁くような小声で言う隼人に、一気に核心を突かれたような気がした。  そうなんだよ…… 最近の僕って、まるで高校時代までの僕に戻っちゃったかのようなんだよ── 宗太郎が溜め息を()く。
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