愛してる。

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暗い洞窟をサチを先頭に進む。一本道だがまっすぐではない。右に曲がって左に曲がって… パッ。 非常灯が点いた。また扉だ。 「ここは家のご先祖様が代々造り続けてくれた宿泊施設で避難場所よ。灯りもこの洞窟のおかげで外には漏れない。」 「避難場所ってゾンビが本当にいるの?」 美由紀が聞く。 「いるわ。」 (見たことはないけど…) サチは鍵を開けて灯りをつける。 「おおー‼」 みんなが驚きの声をあげるこんな洞窟に似つかわしくない、ちゃんとした部屋だ 「失礼しまーす。」 「檜のにおいがする。」 「えらく狭いね六畳くらい?」 「ここは玄関よ」 壁紙の模様で気づきにくいが奥の壁が引戸になっていた。そこあけると傾斜の低い階段が50mくらい続いてその先に梯子がある。 「カッコいいね。こんなホテル見たことあるよ。」 壁は洞窟のまま、壁かけの間接照明が床を照らすものと室内を照らすもの上下2列。階段はコンクリート製。階段の途中が広い踊り場になっていて床はコンクリートに絨毯が所々敷かれ、家具が備え付けてある。ソファー、ベッド、テーブル…テレビまである。カビが生えていないところを見ると空調も調整されているらしい。 「要塞だね。」 「みんな、荷物を置いていいよ。」 「疲れた。」 「精神的にね。」 「こんなに立派な部屋ならゾンビが来ても、大丈夫だ。」 「ちょうどいいわ。休みながら聞いて、私の家族が代々守ってるこの島での過ごし方。みんなもちゃんと守ってね。」
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