死ねない…

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体には傷ひとつ付いていない… レールの隙間に入った幸運な男 誰の目にもそう映る状況ではある しかし… いや、確かに轢かれ引き裂かれた 瞬間的に激痛もこの身に感じた ただ… その間ずっと意識があったのだけが不思議だった… 何人かの男たちがレールに降りてきて、私をホームに戻してくれる。 「何があったか知らないが、自殺はいけないよ」 「命はひとつなんだよ」 「とにかく無事でよかった」 あちこちから聞こえる励ましに混ざって [自分が死ぬくらいなら…殺せよ] えっ? 辺りを見回すが声の出所がわからない 駅員室に呼ばれて、しばらくすると警察官に引き渡され、警察署に連れていかれたが… 「後ろから押された」 の一辺倒で押し通した…自殺未遂だと後がややこしい。 聞き取りを担当した男は一通り聴取を終えると、さも面倒くさそうな一瞥をくれて 「結構です。ご協力ありがとうございました。誰か迎えに来てくれる方はいらっしゃいますか?」 と 厄介払いしたいようだ 私はいったん自殺を諦める事にした。 ……………… 実家に戻っている女房電話する 「もしもし…
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