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数年前―――
「JACA広告賞おめでとう。これで君の将来も安泰だな」
「いえ、まだ入選にすぎません。一度や二度では…まぐれ当たりと言われかねませんから」
その日の帰り道にふらっと立ち寄った古物商の刃物コーナーのガラスケースに一点だけ片刃のカミソリがあった。持ち手のところにはスカルに薔薇の細工が施された、とても目を引くカミソリだ…スカルの目には赤と青の石…でも一番惹かれたのは刃の輝きだった。
紙を被せただけで切れそうな刃…
「美しいでしょ?」
老店主が後ろから声をかける
「ええ、まぁ。」
「斬りたくなりませんか?刀を手にした者はその美しさに魅了されて、人を斬りたくなるそうですが…」
「これはカミソリの様にみえますが?」
「ええ、ヘンケルスのヴィンテージ。曰く付きのカミソリです。」
「じゃあ、髭を剃りたくなるんじゃないですか?」
「ええ、でもこのカミソリは殺人床屋のスゥイニードットから切り裂きジャックに譲られたものだとか…このカミソリのオーナーは代々仕事は大成功するが不幸が訪れて不可解な最期を遂げるとか…ハハ。都市伝説みたいでしょうか」
「本当に大成功するんですか?」
「さて…私には効果がありました。経済的には…ただ家族は列車事故、火災、病気と先立たれ、私はガンです…私が死ねば財産は寄付するしか…」
「いくらですか」
「高いですよ…」
「ええ。」
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