第二話 友達

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 窓から射す光がオレンジに病室の中を照らしている。  圭介の母親が帰った後、静まり返った部屋の扉が動いた。  母ちゃんが忘れ物でも取りに来たのか? と圭介が扉を見ていると、扉の向こうから聖志がひょっこりと顔を出した。圭介は驚き、同時に笑顔になっていく自分に気づいた。 「あれ、今日も来てくれたの?」 「よう。調子はどう?」 「うん、大丈夫。明日は退院だし」  聖志はニコニコと病室へ入ってくると圭介のベッドの横に立った。パイプ椅子に鞄を置き、中から一冊の本を取り出す。 「これ、写真を整理して作ってみたんだ。暇してるだろうし、気分が悪くなけりゃ見てみて?」  そう言って手渡された本は結構な厚さでズッシリと重い。 「ありがと」  中を開けてみると、学生服の圭介と聖志がたくさんいた。学生時代のアルバムだ。そこには圭介の失くした記憶がぎっしりと詰まっていた。 「これ……」  圭介はアルバムからバッと顔を上げ、聖志に感謝の念を込めて再びお礼を言った。 「ありがと!」 「うん。思い出そうとしなくても大丈夫。俺が全部教えてやるから」 「うん!」  記憶のない圭介にとってこのアルバムは記憶への道しるべであり、記憶そのものと思えた。そして、聖志の言葉も圭介にはとても心強かった。  圭介はさっそくとばかりに聖志の袖を引っ張り、自分の隣に座らせる。聖志の肩に肩をくっつけ、寄り添い合うように二人でアルバムを覗き込んだ。 「圭介とは一年の時からずっと同じクラスだったんだよ。三年間一緒だ」 「うんうん」  
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