第二話 友達

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「……で、これ。春の行事で遠足あるじゃん? 遠足って言ってもバス乗って遊園地行くだけなんだけど……」  二人がどういうキッカケで初めて言葉を交わしたのか。何があって一緒につるむようになったのか。二人で先生にきつく叱られた事件。委員会をエスケープしてゲーセンに遊びに行った事。フリータイムをフルに使った二人カラオケ。  そんなバカばっかりしていた事を、聖志は一から順を追って写真を指差し辿りながら、その時の状況とエピソードを一つ一つ丁寧に教えていく。  思い出を聞いたところで圭介は懐かしさを微塵も感じない。しかし、話を聞いてるだけでその時をまるで体感しているようにドキドキワクワクしていた。どれもこれも圭介を夢中にさせるエピソードばかりだった。  こんな楽しかった思い出を失くしてしまうなんて。なんてもったいない。圭介は胸を躍らせながら「次は? これは?」と聖志にせがんだ。 「あ、もう晩御飯の時間だろ? 俺もあんまり居ると怒られちゃうな」 「え、もう? もうちょっと大丈夫じゃない?」  ご飯の匂いが漂ってきた。外では人がゾロゾロ歩く気配がし、看護師さんの話し声も聞こえる。そのうちドアが開いて「トレー運びましょうか?」と現れるだろう。
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