プロローグ

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 膝の上のアルバムをパラパラと懐かしい日々を追い思い描きながらページをめくっていく。  こうして昔のアルバムを見ていると、気持ちが落ち着き胸のあたりがじんわりと暖かくなる感覚を圭介は静かな部屋で一人味わった。  圭介が手にしているアルバムは学生時代に撮った写真。  改めてアルバムを見て、こんなにたくさん写真を撮っていた事に、圭介は自分でも驚いていた。というのも、圭介にはまったく自覚がなかったのだ。  めんどくさがりな性分で、学校で販売していた写真も全部は購入していなかったし、自分たちで撮った写真もプリントすることもなくほとんどデータのまま実家のパソコンへ落としそれっきりになっている。今となっては現存しているのかも不明だった。 「聖君てほんと、マメだよね」  アルバムをめくりながら、しみじみと独り言を呟く。  こうやってちゃんとアルバムになっている物を眺めていると、データ保管のデジタル社会になってしまっても、やっぱり昔ながらのアルバムはいいもんだなと思える。  圭介はこのアルバムを贈ってくれた人物に「ありがとう」と深く感謝した。温かな気持ちでアルバムを眺めながら、ふと笑みを零す。  ふふ、学校サボってゲーセン行った写真とか普通撮るかね。証拠写真以外の何物でもないじゃんね。
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