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「どした?」
「聖君、明日はお仕事なの?」
「ん? ううん。基本、土日は休みだよ」
「じゃぁさ! 泊まっていきなよ」
「いいの?」
その為にビールを大量に買ってきたのだが……。お人好しで優しい圭介らしい。そんなところがとても好きだったんだよね。昔も。
「うんうん。どうせ俺も一人で暇だし、聖君いてくれた方が助かるし、またいっぱい話聞かせて欲しいしさ。聖君さえ用事なかったら。土日も付き合ってよ」
圭介からの願ったり叶ったりな申し出。聖志はふざけてる雰囲気で正座して頭を下げた。
「俺も圭介を一人にするのは心配だし、有り難く泊まらせて貰うよ。お世話になります」
「お世話してもらうのは、俺なんだけどね?」
おどけた表情でそう言って少年みたいに笑う圭介。聖志はこのイタズラっ子みたいな彼の笑顔も好きだった。表情豊かで見ていて飽きない。嬉しくて嬉しくて、ビールを飲みながらついニヤニヤしてしまう。
「……そういえば、お風呂は入っていいんだよね? 足さえ濡らさなければ」
「うん。シャワーはしてる」
「市のゴミ袋も買ってきたし……アレくらい大きかったら余裕だよな」
「至れり尽くせりだね。聖君いい嫁さんになれるよ。あはは」
「マジ? じゃあ、圭介に貰ってもらおう」
冗談だと分かっている会話で、ドキドキしてしまう。
「なんだよそれ~あはははは! いただきます。なんちゃって」
「お風呂にする? ハンバーグにする? それともあ、た、し?」
「ぶはっ! マジウケる!」
「あははは!」
高校時代と同じ、楽しそうに笑う圭介。この笑顔を間近で見ていられるなら、それだけでいいと聖志は一瞬思った。でも直ぐにその思考は暗いものへと変化していく。過去を思い出すのは喜びよりも苦しみの方が大きい。でも圭介はそれを知らない。思い出す必要もない。
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