第三話 痩せ我慢

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「ただいまー」 「おかえりー」  いつものようにスーパーの買い物袋を持って現れ、そのまま真っ直ぐ冷蔵庫へ行き食材をしまう。そんな聖志を圭介はお母さんみたいだと思った。  今までずっと食生活をコンビニに頼っていた圭介がちゃんと暖かな食事を摂れるのも聖志のおかげであり、社会人になってから付き合っていた彼女でもこんなに面倒を見て貰った覚えはない。  圭介自身、恋人にそういったことを望むタイプではなく、甘えん坊ではあるけど亭主関白とは程遠い個人主義者だったからだ。  そんな考えが浮かんだのは、圭介の以前付き合っていた恋人が可愛かったけれど、なかなか金銭のかかるタイプで、してあげるより、してもらう思考の持ち主だったからかもしれない。 「足はどう?」  ソファにもたれる圭介の背後から、冷蔵庫のドアが閉まり、水が流れる音と共に聖志が声を掛けてきた。 「うん、問題ないよ」  振り返り、手を洗っている聖志の背中を見つめ返事をする。 「仕事の方は? 順調なの?」 「おかげさまでバッチリだよ。聖君が美味しいご飯作ってくれてるから」 「ははは。おだててもこれ以上のもんは作れないよ? 今日もオムライスだけど……いい?」 「充分充分! 大歓迎」 「今日はちょっと、あんかけオムライスにチャレンジしようかな~って。だから圭介の好きなケチャップ味じゃないけど」 「えー! あんかけ? オシャレだね! なに? 中華風とか?」  「そうだねぇ。中華風だな。天津飯みたいなイメージで」 「逆に凄いよ! すっげー楽しみ」  聖志は話しながらスーツからジャージに着替えて、エプロンを身に着ける。職場から圭介のマンションへ直行した聖志はまだ一度も座っていない。いつも直ぐに着替えて夕飯作りを始め、御飯を炊く合間に風呂掃除まで済ませる。相当な働き者だ。  そんな聖志に、怪我してるとは言え、家族でも恋人でもない、ただの友達なのに、流石にちょっと甘えすぎだよな……。と、圭介は申し訳なく思っていた。   
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