第三話 痩せ我慢

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「お待たせ~」  チャーハン風の御飯にふわふわのオムレツが乗っている。その上から、とろみのついたあんがたっぷりとかかっていた。 「その卵をフォークで半分に切ると、広がるから。やってみて」 「おう。……おおおおっっ! 半熟オムライス!」  チャーハン、あんかけ、とろとろ半熟の三層ドーム。こんなオムライスを見たのは初めてだ。と圭介は感激して、早速両手を合わせ「いただきます」をするとオムライスをスプーンで掬い口へ運んだ。 「どう?」  すかさず聖志が身を乗り出し、ワクワクした表情で圭介を覗き込む。その目はキラキラとしていて、圭介は男相手に素直に「可愛いな」と温かな気持ちになった。それは以前付き合っていた彼女に抱いた気持ちと同じだった。 「おいひいっ! いいね! 中華風」 「美味しい? やった!」  小さくガッツポーズをする聖志にウンウンと頷いて、二口、三口と圭介はオムライスを口に運んだ。 「あ、サラダもあるんだった」  立ち上がり冷蔵庫へ行った聖志は戻ってくると、冷えたガラスの器を圭介の前に置いた。海草サラダには既にちゃんと中華ドレッシングがかかっている。 「海草は髪にいいからねー。これもちゃんと食えよ」 「ん……、それは……何か含んでいらっしゃるの?」 「え? 含んでない。含んでない」  聖志はそう言いつつもニヤニヤとしながらチラッと圭介の髪を見る。 「なんだよー。ハゲてねーよー」  圭介は前髪を引っ張るように下ろす。確かに猫っ毛ではあるけど……大丈夫……だよね? と内心ちょっと焦った圭介の様子を見抜いたのか、聖志はあっけらんと笑い放った。 「あははは! 冗談だってば! いいから。食えって!」
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