プロローグ

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 また次のページをめくる。  二年の体育祭の写真だ。  応援団の大きな旗の前で、バトンを拾っている圭介。  リレーのアンカーはこのアルバムを作ってくれた人物、『水沢聖志』で、圭介が聖志にバトン渡すその直前で転んでしまった時の写真だ。  苦い思い出ではあった。しかし、聖志はバトンを受け取ると前を行く走者をグングンと追い上げ、ゴール手前で先頭の走者を追い抜き、劇的な勝利をおさめた。クラス対抗リレーで一位になり、大きな点数が入ったお陰で見事団も優勝できたのだ。  だから圭介はちっとも気に病んでいない。  自分のコケも演出の一部として、役目を果たせたと思っている。確かにクラス対抗リレーは大いに盛り上がり、アンカーである聖志は圭介の目から見ても超がつく程かっこよかったのだ。  写真を眺めているだけで、当時の映像が頭に浮かんでくる。コケた時の観客席の悲鳴やどよめき。聖志が他のクラスの奴らを追い抜いた時の大歓声が頭の中で聞こえてくるように感じていた。  圭介はまたページをめくり、首を傾げた。 「なんでこんなとこ撮ったんだろ……ただ昼飯食ってるだけっぽいけど」  疑問に感じたのはパンを食べている写真。  でも、ただの食事風景ではない。  一枚の写真に圭介がアップでパンに齧りついてる。おふざけで撮ったというような表情をしているわけでもない。ただ食べてるだけの写真。その下に同じアングルで同じようにパンを食べてる聖志の写真が並んでいた。  パンを食べている所をお互いに撮り合うなんて、女子みたいだ。でも、それだけ仲良しだったんだなと解釈し圭介はそれ以上気にするのを止めた。
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