第三話 痩せ我慢

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 圭介は部屋の中で自分の存在をポツンと感じた。まるで取り残されたようだった。六畳の寝室にリビングダイニング。そんなに広い高級マンションでもない普通の部屋なのに、やけに広くて寒々とした空間だと感じる。  あんなに良くしてもらったのに、良かったのかな? ……これで。……俺、なにやってんだろう。  いいようのない寂しさが圭介を包む。  でも圭介は、これ以上聖志に甘えていれば取り返しがつかなくなるような気がしたのだ。今まで誰かに執着することもなく個人主義で生きてきた圭介だったのに、ドンドン自分が自分じゃなくなるように思えた。  どこまでも聖志に寄りかかり、依存して束縛してしまうのではないか。そして、完全に怪我が完治して聖志が「役目はお終い」と二人のあいだに距離ができた時、自分がそれに耐えられなくなるんじゃないか。という不安を感じていた。でもそれは圭介の心の問題であり、聖志に説明するのは酷く困難なことに思えたのだ。  肩を落とし帰って行った聖志の後姿を思い出しながら、圭介はソファの背に隠れるように横向きにもたれ体を丸めた。 「ごめんね……聖君」  
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