792人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
その隣のページには、カラオケ屋での写真。
十時間カラオケの時に撮ったものだ。熱唱してるものや、ジュースを飲んでるところ。曲を選んでるところ、タンバリン振ってるところ。最後はグッタリとダレきっている写真。もうほとんど歌ってる気配すら無い。これはきっと終盤あたりに撮ったものだろう。
そして、次のページ。
夢の国ランドの写真。学校の制服を着ている。
夢の国ランドには何回も遊びに行ったことがあるのに、なんと修学旅行も夢の国だったのだ。聖志は夢の国ランドが大好きだからすごく喜んでいた。写真を見てもそれは一目瞭然だった。
テンション高そうな表情で楽しげに写っている二人。男子でキャラクターの耳カチューシャをつけているのは、圭介と聖志だけだった。
「楽しそうだけど……ふっ、……恥ずかしすぎるな」
アルバムを楽しんでいるとピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。その後に、ガチャッと鍵を開ける音が続く。
圭介は一人暮らしだが、合鍵を持っているのに、わざわざチャイムを鳴らす人物が誰なのかはわかっていた。
勝手に入ってくりゃいいのに。ホント真面目さんなんだよな。
ドアが開く音がして、声がする。
「ただいまー」
「おかえりー」
二人の間で当然のように挨拶が交わされる。
現れた聖志の手には左手に仕事用の鞄。右手には重そうなスーパーの袋を二つもぶら下げていた。それでも疲れた様子もなく、機嫌良さそうな表情でリビングへ入ってくる。
「はー重かった」
「お疲れ、俺もそっち行く。……手伝って」
「いいよ。直ぐ済むから」
ソファから体を起こそうとした圭介に、聖志は苦笑いしながら冷蔵庫へ直行した。スーツのままスーパーの袋から食材を出し、冷蔵庫へ入れ、空になったスーパーの袋は丁寧に小さくたたんでまとめ、最後に手洗いをしている。
聖志はしっかり手を洗うとネクタイを緩めながら、ソファで足を伸ばしている圭介の前へやってきた。膝の上にあるアルバムを見て微笑む。
「また見てたの? 医者も言ってたろ? 無理しなくていいって。自然に任せればいいんだよ?」
最初のコメントを投稿しよう!