第五話 メモリースティック

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 今度は深い後悔が圭介に襲い掛かる。  治るまでと考え、連絡を取らないでいた自分を許せなくなる。その気持ちが圭介を駆り立てた。  こうなったら聖志の実家へ電話を掛けよう。  普通ではありえない思考だった。ただ相手が電話に出ないだけのことなのだ。予感も不安も、全て圭介の根拠のない妄想でしかないのだから。しかし、圭介の手元に高校の卒業アルバムはない。あるのは聖志がくれた二人のアルバムだけだ。  圭介は一先ず自分の実家へ電話して、高校の卒業アルバムから聖志の住所を調べてもらった。次にその住所から電話番号お知らせダイヤルを使って聖志の実家の電話番号を調べる。 『やりすぎだろ?』   頭の中で己の声が圭介に警告する。  思わずダイヤルボタンを押す指が止まった。その声に奥歯をギリッと噛み黙らせ、通話ボタンを押した。時計を見ればまだ八時。寝ている時間ではないだろ。  しかし、帰ってきた電子ボイスに圭介は愕然とした。 『この番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上……』  メモを手に履歴で番号の打ち間違いがないかを確認する。  間違ってはいない。再度、電話番号お知らせダイヤルの方にも確認する。やっぱり間違っていない。  どういうこと? 一人暮らしやら、携帯ならともかく。実家だろ? なぜ使われていないなんて事になんだよ。
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