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と――。
そんな僕らを横目に。
「あれ」
「やっぱりそうよ。ねえ」
年配のご婦人方が
ひそひそ言いながら前を通り過ぎてゆく。
「お知り合い?」
「どこかで見たことあるな」
九条さんは気まずい笑いを噛み殺すと
「僕はきっと不貞の夫だと思われてる」
口端のラズベリーソースを舐めながら言った。
「それじゃ僕は、人の夫をたぶらかすまかりならない悪女かな」
ソファーに深く座り直し
僕は誘うように脚を組んで笑った。
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