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「それじゃいっそ、非常経路を伝って屋上に出ちゃおうか?」
「いやいや、ここ70階だよ?」
どうやら
見たこともない顔を見せるのは
「ちょっと大胆すぎるかな?」
「いいや。正気じゃないだけ」
僕ではなく
彼の方だったようで――。
「いいかい、九条さん」
荒ぶるサラブレッドを宥めるように
僕は恋人の頬を撫で小声で囁く。
「ここでできるとしたらレストルームか――」
指さす先は
人気のないパーティー会場のバックヤード。
「それ以外は即刻退場だ」
だけどロマンチストの王子様は
「どっちも僕の趣味じゃないよ!」
お気に召さないご様子で。
「君にもふさわしくない」
まったく――眉根を寄せて首を横に振る。
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