第2章

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『確か』なんて言い方をしたのは、あまり接点がないからだ。 秘書課のオフィスは、社長室と同じ5階のフロアにあり、私達営業事務と仕事することは皆無といっていい。 ごくごくたまに社内ですれ違ったり、社内行事で見かけるくらい。多分、直接話したこともない気がする。 「……」 …ちょっと緊張する。 別にエレベーターを使うこと自体、悪いことではないのだが、ほとんど知らない相手と一緒というのは居心地がいいとは言えない。 しかも、秘書課。 秘書課は2人しかいない部署なのだけれど、どうも別世界というか、近寄りがたい印象がある。 特に榛葉課長は、いつも社長の傍らに控えているイメージで、ある意味社長並に取っつきにくい。 …やっぱり階段で行こうかな。 榛葉課長に気づかれる前に、と後ずさったものの、タイミング悪く課長はこちらを振り返ってしまう。 「……」 私を見て、意外そうに目を軽く見張る。 …ですよね。 こんな早くに事務員と会うことなんて、そうないだろうし。 いや。それより榛葉課長は私を知らないかもしれない。 社長秘書の彼と違い、私はいち事務員に過ぎないのだから。 …だけど、 「…おはようございます、中川さん」 と、榛葉課長は微笑みながら会釈してきた。
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