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「…あ、お、おはようございます…!」
慌てて返す私。
しまった。
目上の相手である榛葉課長に先に挨拶させるなんて。
気まずさから必要以上に深いお辞儀になってしまう。
榛葉課長は私のそんな失態を気にする風でもなく、柔らかく微笑んだままだ。
「中川さん、早いですね」
「あ、はい。少しやることがあって…」
「営業本部、忙しいんですか?
繁忙期ではないと思っていましたが…」
「い、いえ! 個人的なことですので…!」
妙な誤解をされてしまいそうなので、必死に誤魔化す。
必死すぎてかえって怪しいかもしれない。
その時、エレベーターが到着したらしく、扉が開いた。
榛葉課長はスマートな所作で乗り込むと、開閉のボタンを押して待ってくれる。
「…どうぞ、中川さん」
「…あっ、す、すみません! ありがとうございます」
平謝りしながら中に駆け込む私を見て、榛葉課長はクスッと笑い声をたてた。
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