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「3階でいいですか?」
「は、はいっ。…すみません」
「あまり緊張しないでください。
それとも…僕、怒っているようにでも見えますか?」
「い、いえ…そんな…すみません…」
「…ふふ、こちらこそ」
馬鹿の一つ覚えのように『すみません』を繰り返す私に対して、榛葉課長の穏やかな態度は変わらない。
初めて間近で見る課長の目は、色素が薄いのか、透き通っているような美しさだった。
…そう。
こんな風に榛葉課長を見るのは初めてだ。
歳は…多分30歳くらい。
男性にしては色白で、ほっそりしている。
でもひ弱に見えないのは、容姿や振る舞いに品があるからだろうか。
自然な感じで流した栗色の髪、長い指、凛とした雰囲気。
…綺麗だと思った。
そして同時に、浅黒い肌で親しみやすい雰囲気の貴文とは正反対だと思いつき
すぐに貴文に結びつけてしまう自分が、情けなく惨めだった。
そうしているうち、エレベーターは3階に到着し、扉が開く。
その瞬間、新しい風が吹き込んだような清々しい気分になった。
どうやら相当緊張していたようだ。
私は『ありがとうございます』と頭を下げ、足早に降りた。
「…あ、中川さん」
ふいに、榛葉課長が呼び止めてくる。
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