第2章

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* * * 制服に着替えて、事務所の自席を掃除すること約30分。 今日の仕事に最低限必要なものだけをデスクに残し、あとはほぼ片付けてしまった。 「…ふう」 朝から一仕事終えたような達成感。 気づけば、鬱々とした気分はほとんど晴れていた。 私は昔から、ぐずぐず考えすぎて、肝心なことほどあまり行動に移せないタイプなのだけど 案ずるより産むが易しということもあるのかもしれないと、綺麗になった机を見ながら思った。 「…さ、そろそろ早い人は出勤してくるな」 私が仕事をしている事務所は、営業本部と総務部の合同のオフィス。 入り口から近い側が営業本部のエリア、奥が総務部だ。 基本的に私は、始業5分前くらいに事務所に入るのでよく知らないが 営業マンは少し早めに出勤する人が多いらしい。 なら、もう誰か入ってきてもおかしくないだろう。 (…そうだ。 もし貴文が来たらどうしよう) 彼は朝が弱いので、それほど早く出勤してこないと思うが 万が一事務所に2人きりなんてことになったら、どうしていいかわからない。 「……っ…」 私は更衣室へと戻り、適当な時間までそこでやり過ごすことにした。
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