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――何をわかれと言うのだろう。
私のことでそんなに悩ませてごめんね。ありがとう、幸せにね。
…とでも言って欲しかったのだろうか。
そして穏やかにカンパイでも交わすつもりだったのだろうか。
まさかね。
だとしたら、本当に愚か者だ。
貴文も、……そんな男を好きだった私も。
自分が悪いと言いながら、言い訳と私への責任転嫁にまみれた別れの言葉。
綺麗に取り繕っているつもりかもしれないが、要するに私と結婚しても出世の足しにならないから、取引先の娘に鞍替えしたということだ。
それくらい私でもわかった。
あまりのことに、言葉も出てこなければ、涙も流れない。
彼はそんな私の様子を都合よく解釈したのか『ありがとう。彩羽の幸せを願っているよ』なんて、最低の文句を付け足してきた。
『さようなら』
そう言い残し、私を置いてバーを立ち去る貴文。
私はその背中は見送らず、手元に置かれたカクテルを凝視していた。
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