第2章

2/10
前へ
/156ページ
次へ
次の日、私はいつもより早く家を出た。 電車と徒歩をあわせ、約40分の会社に真っ直ぐ出勤する。 おそらく始業の1時間前には到着するだろう。 早めに出勤する一番の理由は、自分のデスクの荷物をある程度片付けることだ。 もちろん、今日辞表を出して、今日辞められるなんて甘いことは思っていない。 引き継ぎもあるだろうし、抱えている細かい仕事もある。 それでも、身の回りの整理をしていくことで、この鬱屈した気持ちが少しはましになるような気がした。 また、そうでもしないと、決心が鈍ってしまうように思えたのだ。 (……やめるしかない、と思ったけど。本当にいいのかな……) 夜の決意は、朝の光により急激に弱くなる。 勢いに任せて書いた退職願いが、今は重い。 もうあの会社には居られない。その気持ちは変わらないのに。 でも…… (…伯父さんの顔を潰すことになるかもしれない…) 私は、紹介で今の会社に内定した―――いわば縁故入社だった。 大学時代、就職活動に出遅れて、なかなか内定をもらえなかった私を心配して、伯父が口を利かせてくれたのだ。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2891人が本棚に入れています
本棚に追加