第2章

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やっぱりせめて伯父に相談してからの方がいいだろうか。 でも、そうしたら理由を説明しないといけない。 伯父は、昔気質で厳しい一面がある。 恋人に振られたから辞めたいなんて言い分を、聞いてもらえるとは思えなかった。 かといって、他にふさわしい言い訳も思い付かない。 せっかく紹介してもらった会社を辞めるのだから、それ相応の理由を考えないと伯父は納得しないだろう。 「……はあ」 昨日の夜の勢いがどんどんなくなっていく。 貴文のことは今でも涙が出そうなほど辛いのに、夜が明けると今度は様々な現実が私を急かし、責め立てる。 逃げることさえ簡単に許されないなんて、一度乾いた涙がまた溢れ出しそうだった。 鬱々した気分で会社に到着したのは、予想通り始業1時間前。 都心から少し外れた場所にある、5階建てビル全てがうちの会社だ。 1階は受付。2階は商品在庫やサンプルを置く倉庫になっており、私が働く事務所は3階にある。 いつもは階段で上がることの方が多いのだけれど、今日はそんな気力はない。社員用のエレベーターを使うことにした。 時間が早いせいか、がらんとしたエントランス。 まだ無人の受付カウンターを素通りし、奥にある小さなエレベーターを目指す。 すると、そこに先客の姿を見つけた。 スラッとした長身のその男性は、見るからに品のいいスーツを着こなし、背筋をピンと伸ばして立っている。 あまりに姿勢がいいので、彼の周りだけ別世界のような緊張感が漂っていた。 (…あれは、秘書課の…) 確か、榛葉(はしば)課長。
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