第1章

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 五月雨が降り続けるこの時。  俺はフード深く被り、刃物を片手に地を蹴り、空を飛び、獲物を追いかける。  死にたくない。まだ生きていたい。  獲物である彼等は必死に俺から逃げ惑う。  だが、鍛え上げた身体能力や技術を駆使する俺からは逃れる事は出来ない。  廃ビルが無数に乱立するこの町で、彼等の人生は終わりを告げる。  逃げるための脚を斬る。  連絡を取られないように腕を切断する。  そして、四肢を無くした獲物の心臓めがけて刃を淀みなく突き通す。  人殺しが。  彼等は死に際に決まってそう言うのだ。  怖かった。恐かった。  最初の頃は眠りにつくことも胃の中に食料を押し込むことすら出来なかった。一日中懺悔に費やすこともあった。泣き叫ぶ日もあった。自殺しよう決意することもあった。  だが、いつ頃からだろうか。   あっそ。だからなんだよ。  そんな風に考えるようになったのは。  俺は俺と成していた根源は変質していることに気がつかない。否、気が付くことが出来なかった。   そして、今日も。  俺は昨日と違う俺へと、醜く、歪に姿形を変える。  さぁ、楽しい狩りの始まりだ。
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