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子供の頃にみる夢は希望に満ちている。
真っ白なキャンバスにピカピカのクレヨンで描く夢には無限の可能性が感じられるから…
でも、実際にキャンバスの前に立つとほとんどの人は絶望する。
真っ白なキャンバスだと思っていたものは、透明なアクリルパネルで、無数の手垢と涙とよだれの跡が、まだら模様となって光にさらされている。
ボクはそこに立ち尽くしたまま、必死にTシャツの裾でパネルを拭うけど、まだら模様はアメーバのように伸びていくだけで、決して消えることはない。
ならば、ボクは手首を歯で食いちぎって、誰にも出せない色を残そう。
血が滴る左手が冷たくてひんやりする…
ボクは必死でアクリルパネルにねじ込むように、血液でボクの夢を描く。
ボクの夢が無慈悲に拭き取られる日がくるのだとしても、他のヤツとは違う“イロ”と“ナマグササ”が少しでも残るように…
この“オモイ”に誰かが気づくように…
神の審判の日に怯えながら、今日も必死でアクリルをなぞる。
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