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(おっ? なんか、うっすらと明かりが見えてきたな)
ひび割れた壁の向こうから、幾筋かの青白い光が差し込み始めた。
(よし、行くぜ!)
今までよりも更に力を込めて、俺が謎の壁へと殴打を続けていたら……。
ドン! ドン! ドン! ドガッ!!
ほどなくして俺の周りを囲んでいた壁は完全に破壊され、最後に勢いよく蹴りつけると、頭上の壁は大きな音を立てて吹き飛んで行った。
直後、頭上から冴え冴えとした青白い光が降り注ぐ。
月明かりだ。
ふと見上げた頭上には、美しい満点の星空が広がっており、夜空を彩る星屑の達の中央には、表面のクレーターまで確認出来るほど大きな満月が浮かんでいた。
「っ……」
文明の発達した現代日本ではなかなかお目に掛かれないような幻想的な光景に、俺はしばし見とれてしまいつつも、すぐに今まで横になっていた場所から体を起こす。
そして、改めて自分が寝ていた場所を確認すると……。
「なんだこれ、棺桶(かんおけ)か?」
視線の先に、無惨に破壊された……。それでもかろうじて原型を留めている縦長の箱の存在を認めた。
……それはまるで、ホラー映画に出て来る吸血鬼とかが入っていそうな雰囲気の、おどろおどろしいデザインの棺桶だった。
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