異世界の歩き方 ~体で覚えるチュートリアル編~

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 楽しげに談笑しながら……。  ……もっとも、傍(はた)から見たら青白い肌のゾンビがニヤケながら一人でべらべら喋(しゃべ)り続けているようにしか見えないのだが……。  とにかく、前世では一人も友達のいなかった杉本は、初めて出来た好きな趣味を共有できる話相手に、心躍らずにはいられなかった。  「それじゃあ、ちぃちゃん。まずは俺からいくぜ」  あ、とりあえずサビだけね、と、前置きをしつつ、  「熱くもえっさかれGA! GA! GA! GAァ!! す(↑)ーべ(↓)ーて(↑)ーを(↓)ーかー(↑)ーけ(↓)ーてぇ(↑)ー!」  杉本は、前世では十年ほど前に放送していた特撮のオープニング歌詞を熱唱。  すると、  『希望の鍵が輝けばぁ! き(↑)ーせ(↓)ーき(↑)ーが舞い降りるぅ!』  杉本の歌に合わせる形で、ちぃちゃんが歌詞の続きを熱唱。  そして、  「『この胸の鼓動DA! DA! DA! DAァ!! あ(↑)ーら(↓)ーぶ(↑)ーる(↓)ーた(↑)ーま(↓)ーしぃ(↑)!』」  ……ついに、転生ゾンビとロリ女神のユニゾンが実現した。  「『正義の剣を掲げてぇ! あ(↑)ーく(↓)ーを(↑)ーきぃりさくんだぁ!! 魔弾 魔弾 魔弾せ(↑)ん(↓)きぃ(↑)ー! りゅっ――』」  ドゴォ!  ……不意に、背後からの凄まじい衝撃が杉本の体を襲った。  「……はっ?」  何が起きたのか分からない。  そんな表情を浮かべつつ、杉本は周囲の墓標をなぎ倒しながら真夜中の墓地を転げ回った。
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