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それに、と、杉本は胸の内で続けつつ、
(……なにより、俺と連中のレベル差がやべぇ。悔しいけど、ここは一旦引いた方が賢明か……)
じりじりと、杉本がモンスター達から視線を逸らさないまま後退しつつ、逃げる隙を窺(うかが)っていると、
『ゲヘェ。クヒ、クヒッ……』
一番手前にいたホブゴブリンAが、背後のトロールを呼び寄せつつ、何やら気色の悪い声で話し始めた。
最初、杉本にはモンスター達が何を言っているのか分からなかったものの……。
けれど、耳を澄ませて聞いている内に、徐々に彼らの言葉を聞き取れるようになってきた。
オートで発動した『自動翻訳』のスキルが、杉本に聞き取れるようにした会話の内容は、このようなものだった。
『大将、あの人間立ち上がったぜ』
杉本に指を指しながら、軽薄そうな声音で話したホブゴブリンAに、
『いや、あいつは人間じゃねぇよ。よく見ろ、あの青い肌、ギラギラした雄黄色の瞳。ありゃあゾンビだ』
大将と呼ばれたトロールが、胴間声で返事をする。
『うぉ、ゾンビぃ?』
『うわ、ホントじゃん! オレッちが思いっきりぶん殴ったのに平気そうな顔してやがるぜぇ!』
ホブゴブリンBとホブゴブリンCが順番に口を開き、更にCの方が杉本を指さしてケラケラと笑う。
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