屍鬼王ギース・ナイトウォーカー

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 「はぁ……はぁ……!」  セシリアは荒い呼吸を繰り返し、苦しげに表情を歪めながら……それでも、今までギースに与えた攻撃とは明らかに異なる手応えを感じ、更にナイフを押し込んでいく。  ……今、セシリアがギースの頭に突き立てているのは、彼女自身が何重にも祓魔(ふつま)の加護を施した、ギースの討滅のために仕上げた特別な一振りである。  全長20センチほどの白銀の刃には、聖水のおよそ数十倍もの浄化の力が込められていて……そして今、その聖なる力の全てが直接ギースの体内へと流し込まれているのだ。  それこそ、並みのアンデットモンスターなら少しでも刃に触れただけで滅されてしまうほどの力の奔流を……。   (……さぁ、いかがですか? ギース・ナイトウォーカー!!)  吊り上げた眼差しで宿敵を射抜きながら、修道女セシリア・ウォルフは今、魂で吠えた。  「グオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ…………プッ! ク、クククッ、クハハハハハハハハハ! なーんてなァ!!」  「っ!?」  ……不意に、ギースの口から垂れ流される絶叫が哄笑へと変わった次の瞬間――。  ズドッッッ!!  突き上げるようなギースの拳が、セシリアのみぞおちに突き刺さった。
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