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そう言ってターロスは肩越しに、今なお喧騒の聞こえて来る街の外壁の向こう側へと視線をやった。
……一応、あの『闘技場』からここまで脱出する際に、ギースは自分達に【スピリテッド・アウェイ】を施したので、よほど追跡される恐れは無いと踏んでいるが、まぁそれも時間の問題だろう……。
もたもたしている内に人海戦術で捜索されたら致命的だ。
ギースは首肯しつつ、
「……あぁ、そうだな。ところでよォ、“そいつ”の事なんだが……」
次いでほんの少しだけバツが悪そうにしながら、“ターロスが背におぶっている人物”を指さした。
釣られて、リーザとターロスは彼の人差し指の先を見やる。
……そこには、意識を失い、ぐったりと脱力した様子のセシリアの姿があった。
「悪いけどよ、その武装シスターが目を覚ましたら伝えて欲しい事があるんだが、いいか?」
まるで些細な事で軋轢(あつれき)を生じさせ、対立し、そして諍(いさか)いの果てにクラスメイトの女子に怪我をさせてしまった小学生男子のような、絶妙に気まずそうな雰囲気を醸すギースに、ターロスは何か微笑ましいものを見るような眼差しと共に頷いた。
ギースは苦笑と共に肩を竦めつつ、言伝の内容を口にした。
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