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小さな手をパタパタと振って、ひたすら『やめてアピール』を繰り返す彼女に、およそ10秒ほど地味に痛い攻撃を行ったギースは、ほどなくしてシオンから手を放すと……くるっ。
再びリーザとターロスに向き直った。
視線を向けられた2人は、一瞬気まずそうに目を泳がせつつも、
「あっ、えっと……ほ、ほら! ギース! 何やってるのさ、今の私達に油売ってる時間なんてないんだからさ、早く出発しないと!」
「そ、そうね! アタシも早くセシリアちゃん連れて帰らなくっちゃ!」
取り繕ったような笑顔と共にリーザは早口で出発を急かし、ターロスはそれに頷きつつ、「それじゃあみんな元気でねー!」と別れの言葉を口にしながら、セシリアを連れて風のように走り去って行った。
淑(しと)やかな月光に照らされながら、『メルカ』方面に向かって物凄い勢いで小さくなっていく筋骨隆々のシルエットを見送りつつ、ギース達も歩き始める。
……そして、
「おい、リーザ。お前……」
まだ10歩も歩かない内に、早くもギースが口を開く。
「な、なんだい、ギース?」
呼び掛けられ、ちょっと挙動不審な感じで反応したリーザに、ギースは今さっきの『セシリアへの伝言(シオン訳)』について尋ねようとして……やめた。
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