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「……いや、やっぱ何でもねぇわ」
カリカリと後頭部を掻きながら、視線をリーザから正面へと戻すギース。
少し不思議そうに、ぱちくりと瞬きを繰り返す彼女をよそに、ギースは先のターロスと今のリーザの反応を鑑(かんが)みて、どうやらこの2人も自分の伝言を聞いた後で何となくシオンと同じ感想を抱いたのだと察し……あえて話を打ち切った。
実際、シオンの推察は当たらずとも遠からずといったところで、もしも本当にギースがセシリアに対して悪意と敵意しか抱いていなかったとしたら、そもそも伝言を残そうなどという発想は出て来なかっただろう。
地球生まれの某聖人が説いた『愛』の対義語は『憎しみ』ではなく『無関心』という有名な言葉のように、ギースもその例に漏れなかったようで、多少なりともセシリアへの情があったのだ。
……だからこそ先ほどのシオンの指摘は、ツンデレキャラがノリと勢いで口走った分かりにくいデレ発言を剔抉(てっけつ)されるような、そんな謎のいたたまれなさをギースに感じさせたのである。
とにかく、と、ギースは続けて、
「まずはどっか身を隠せる場所を探さねぇとな。今回は流石に色々やらかしたしよォ」
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