第1章

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勉強は得意じゃない。 スポーツなら誰にも負けない自信がある。夏休みは水泳を頑張るって父さんと約束をした。100メートル泳げるようになるのが目標。 早起きしてラジオ体操に毎日参加する目標は、母さんの提案だ。 毎日頑張った。勉強はできないけれども僕にも出来ることがあるんだって思うと楽しかった。ラジオ体操には、小さな妹も連れていったし、カードに毎日増えていく出席スタンプが、何だか誇らしかった。 夏休みも後1日。 ラジオ体操のスタンプはぎっしり埋まり、残す空欄はひとつになった。 最後の朝、妹と家を出た。カードを妹に自慢しながら橋を渡る。この長い橋の向こうが公園だ。妹にせがまれカードを妹に渡した瞬間、いたずらな風が吹いた。川にヒラヒラ舞い落ちるラジオ体操カード。僕のラジオ体操カード。 後1個スタンプを押してもらえれば目標達成だった。 僕のラジオ体操カード。 川にのまれて消えたラジオ体操カード。お巡りさんに相談したら、見つかったら連絡するよって約束してくれた。 僕のラジオ体操カード。見つかるかな。
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