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そっか…私は「夢」をなくしたから。
外の景色が見えづらくなっていたんだね。
一人家を飛び出し、その夢に私は、ひた向きに頑張ってきた。
必ず、そこに自分がたどり着き、輝くと信じていた。
だけど、どうしても越えられない壁があって、
それでも、何度も何度も登ってきたけど、
どうにもならなかった。
諦めなければ、とかいう問題ではなく根本的なもの。
徐々に、私はその夢を落として、落として、散らかして。
気づけば、私の中でそれは、夢でもなくなって。
心の中で残ったのは「虚無感」だけ。
夢をなくし、目標をなくし、「自分」をもなくした。
もう、なにも頑張りたくない。
だから、定期的に入れていた、両親への連絡もやめた。
いや、本当はこんな私を見てほしくなくて、連絡しなかっただけだ。
だいぶ連絡していない。
だけど…。それでも、こんな私にお母さんはメールを送ってくれた。
「たまには、お母さんの相手をしてちょうだい!どんな愚痴も相談も乗るからさ。なんなら帰っておいで」
遠くに居ても、お母さんは私の事をわかっていた。
私は、自分のことさえわかっていなかったのに…。
私の中で雨が降り出した。
それは、私の瞳からも溢れ出て、すぐに止まなかった。
だけど、モヤモヤした厚い雲の中からじゃなくて、
お日様が出ているのに、降る雨のようだった。
心がとても温かくなっていくのを感じる。
今なら、また歩き出せそうだ。
頑張っていた私を、また拾いにいこうかな。
「もしもし…お母さん、あのね…」
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